ついにこの時がやってきました。『マトリックス』シリーズ18年ぶりの新作、『マトリックス レザレクションズ』公開。
前回のブログでも書いたように、僕は『マトリックス』という作品が大好きです。いや、大好きというのはかなりぬるい言い方で、人生においてかなりの（悪）影響を受けています。
そんな重大なシリーズ、それも前作で完璧な形で終わっているシリーズの最新作。そりゃあもう、吐きそうなほど緊張しながら映画館に向かいました。
で、どうだったか。既にご覧になった方なら分かって頂けると思うのですが、本作はネタバレしないと多分何にも言えないので、ネタバレする前に先に結論を書いてしまいます。最高でした。
ありがとうラナ・ウォシャウスキー。ありがとうキアヌ・リーブス。ありがとうキャリー＝アン・モス。今はただただそんな気分です。このシリーズを好きであり続けて良かったと思います。
一方で、まだ鑑賞してない方でなおかつ「興味あるけど過去作見てなくても大丈夫？」という方。もしあなたがそんな方なら、悪いこと言わないから過去3部作見てから観ましょう。
今作は「もし世界がまだマトリックスに支配されていたら？」と、2作目以降とは別の世界線の続編のようにも受け取れる宣伝をされています。実際それもある意味では間違ってないのですが、話は紛れもなく『リローデッド』『レボリューションズ』が前提になってます。1作目を見ただけだと「どういうこと？？？」ってなるのは間違いないですし、何なら映画本編だけでなく現実世界で「第1作公開後、ポップカルチャーで『マトリックス』がどういう存在になって、どう受け止められたか」という外側の予備知識も要求されます。あと必修とまでは言いませんが、外伝の『アニマトリックス』も観ておくと作品への理解度がかなり上がると思います。
もしあなたに予備知識が一切ないのであれば、ぜひ『マトリックス』→『アニマトリックス』→『リローデッド』→『レボリューションズ』の順番で観てください。そんなに見るの大変だよ！ と思う方もいそうですが（実際大変だと思う）、年末～正月の長期休暇に『マトリックス』漬けになるのも悪くないと思います（数年前、『クリード２』を見るために『ロッキー』1作目から『クリード』までマラソンしたことがありますが、結構楽しかったです。本数的にはそれに比べれば楽なはず！）
そして何より、ラナ・ウォシャウスキー監督（というかウォシャウスキーズ）がどういう経緯で本作を手掛けることになったか、あるいは『マトリックス』という作品が今の時代、どんな人たちにどんな風に”利用されていたか”。軽くでいいので、その辺の知識は入れておいた方がいいです。
（注：ここからネタバレあり）
で、何が最高だったのか？ ですが、今このシリーズを復活させるにあたり、作り手が『マトリックス』トリロジーという存在やその影響と真剣に向き合い、その上で本気で作品を取り戻しにかかってるのが痛快だし素敵だし涙腺にきました。
序盤から全力でメタメタにメタい話を展開（「ワーナーが私たち抜きでも続編を作ると言ってる」って！）し、その後に出てくる『マトリックス』オタクたちは完全に自分そのまんまで居心地の悪さを感じながらも爆笑しました。その上で本作は、あくまで『マトリックス』という作品に籠められたウォシャウスキーズのメッセージに回帰する。革新的な映像技術でも哲学的な世界観でもなく、『マトリックス』で一番大事なのはこのメッセージだと宣言してくるのが本当に痛快でした。
あと、やはりというか本作はやはり『レボリューションズ』以降の世界の物語で、ちゃんと『レボリューションズ』を経た世界がしっかり描かれてるのも『レボリューションズ』好きの自分としては嬉しかったです。前作で描かれたプログラムの”愛”や、機械との戦争の終結という物語の先を描くとしたら、この形しかなかったんじゃないかと。機械側が前作の戦いを経た後、機械同士で戦争を始めたというのも、前作の続きであり機械の更なる進化を描くなら自然な流れだし。あと、個人的には人類とシンシエントが協力して植物の再生に成功しつつあるという描写で涙腺がやられかけました（『マトリキュレーテッド』！）。あの共闘は無駄じゃなかったんだ……。
前述した作品メッセージ自体が更に進化（深化）しているのも良い。過去作では「マトリックスからの解放」を目的としていたのが、今作では「マトリックスを良い形に造り替える」になって、あの最重要人物から語られる……マトリックス（支配）からの脱出が陰謀論者や極右に都合よく使われていたことに対して、こんなに見事に反撃を見せてくれるなんて。その最重要人物が悪役にかます強烈な攻撃も含め、本当にもう血沸き肉踊りました。帰ってきてくれてありがとう、そのメッセージを発してくれてありがとう……！！
本作の魅力を、個人的にすごくざっくりとまとめると
- 『マトリックス』という作品を経たオタクカルチャー批評
- 納得のいく『マトリックス レボリューションズ』の先
- 最後に『マトリックス』の根幹のテーマへと帰り、進化（深化）したメッセージを放つ
と、なるのですが……こんなに真摯で誠実で正解な続編ってあります？ 少なくとも僕にとっては、ここ数年見た中で最良の形の「続編映画」だったと思います。
これ以外のところでいうと、ネオ同様に記憶をなくしていた状態から復活し再戦、そして思わぬ形で共闘したスミスも最高でした。ジョナサン・グロフ版のスミス、すげぇ良かった……ちゃんとヒューゴ版スミスから繋がってるように見えたよ！
それからナイオビがああいう形で帰ってきたのもグッときたし、バッグスも絶妙にいいポジションの新世代キャラでしたし（キッドが戦士として成長したらこんな感じになったんだろうか）。サティーの役回りは美味しかったし、モーフィアスはそう来たか！ って思ったし（前半やたらはしゃいでたのが面白かった）。ローランド船長が思わぬ形で名誉回復（前作だと単に性格悪い人で終わっちゃってたので）したのも良かった。あとメロビンジアンの落ちぶれ方があんまりにもあんまりで、まぁ笑ってしまいましたね。確かに思い出すと最初から妙に小物感ありましたが。でも「小物」って言えばやはり一番は本作の黒幕かな……めちゃくちゃ憎たらしい役回りでしたが、それも含めて良かったです（前任者が神のような存在として描かれていた分、余計に人間臭さが感じられたのも◎）。
まぁそんな感じで、良かったところを書き出すと本当にキリがないのでこの辺にしておきますが。本当に本当に最高でした。ありがとうマトリックス！
↑日本のファン向けメッセージ。あくまでクールなキャリーとテンションが明らかにおかしいキアヌの対比が最高すぎる。
↑予告編で使われてて本編でも流れてた「White Rabibit」という曲。最近の曲かと思ったらかなり昔の曲なんですね。
↑通常版と特別版でパンフの内容が全く違う。サイズは前作と違って常識的。
