狂信者こそ心に疑念を宿している。

Ryuto(リュート・スマイリー)のブログです。趣味の話とかしたい。

『バビロン』お下劣の中心で愛を叫んだデイミアン・チャゼル

スピルバーグの『フェイブルマンズ』が公開したタイミングなのに『バビロン』の感想を今更あげるやつ(数週間前に書いていたのにアップしてませんでした)。

 

 


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 デイミアン・チャゼルの映画はなんだかんだで『セッション』以降毎回映画館で鑑賞している気がします。特別好きな監督ってわけでもないのですが、やっぱ公開されると気になってしまうというか。前作『ファースト・マン』はテーマ的にもかなり好きな作品でした。
 で、今回の作品。日本公開前から既に本国の評判が荒れに荒れ、「相当(悪い意味で)ヤバいらしい」という評価は伝わってきていました。というか正直それで逆に興味をそそられた節はあります。
 舞台がサイレント映画全盛期、狂騒の1920年代で、ご丁寧にもタイトルが『バビロン』なので、まぁ大体どんなことが起きるのかは想像できるのですが、確かにすごかった。

狂騒の20年代 - Wikipedia

 まず開幕からうんこおしっこセックスドラッグ満漢全席ですよ(比喩ではなくこの要素全部タイトルが出る前に出てくる)。とても汚い。この映画のことを「とても汚い『ラ・ラ・ランド』」と評しているツイートを見かけましたが本当にその通りです。
 加えて前半は映画全体が躁状態な演出が続きます。劇中の登場人物は大体全員コカインをキメてますが、これチャゼル本人もキメてんじゃないの? と疑いたくなるレベル。コカイン意外にアスベストもキメてます。あとエキストラが面白半分で死にます。どうなってんだよ……。
 で、物語が進むにつれトーキーの時代に入り、登場人物たちは(本人たちが受け入れるか否かに関わらず)時代の流れに翻弄されていく、っていうのはまぁ、大体想像通りで。前半の盛り上がり方に対して後半はテンション下がり気味なのですが、ストーリー的にこれはしょうがない。
 そんな物語後半でテコ入れの如くブッ込まれるのが親愛なる隣人トビー・マグワイア。わずか一年ほど前に僕たちの涙を掻っ攫っていった彼が、本作ではマキシマム狂ったサイコ野郎を演じてます。笑顔がトラウマになるくらい怖い。
 そしてやっぱり、観た人なら分かるラストのアレですね。本当に「ラストのアレ」としか形容しようがないのですが、話そのものよりチャゼルの映画への想いがダイレクトにぶち撒けられてるようで、「これ思いついても普通やらねぇよ……」とドン引きながらも笑ってました。ラストがヤバい、という話だけは知ってたので個人的には覚悟してたため笑えましたが、怒る人の気持ちはとても良く分かる。
 あと真面目に考えれば映画としては長すぎるし、主要人物の話が散らかってる感もあります。ブラッド・ピットマーゴット・ロビーの話、これ本筋に据えるのはどっちか一方でもよくない? とか。お二方どちらも名演なのでどっちが悪いってことはないのですが。というかこの2人が主役だから3時間持ってるとも言えるし。
 総じて、お世辞にも良くできたとは言えない(あと何度も言うけどとても汚い)作品ですが、正直個人的には結構楽しんでしまいました。これが本国で絶賛されてるとしたらまた見え方も違ったんでしょうけど、顰蹙を買ったところも含めて嫌いになれない。

 まもなく上映も終わりそうなので、広い心とお下劣耐性を持った方にはオススメです。