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『ダム・マネー ウォール街を狙え!』赤ハチマキはランボーフォロワーの証

 あけましておめでとうございます。もう2月ですが。

 2024年が始まってからまだ1か月しか経っていないのに、地震が起きたり、飛行機が大変なことになったり、桐島聡が見つかったり、桐島聡の隣の男が逮捕されたり、もうなんだか大変なことばかりです。

 そんな中、今年から始まった新NISAにぼんやりと想いを馳せながらこの映画を見てきました。

 


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 クレイグ・ギレスピー監督最新作『ダム・マネー ウォール街を狙え!』を今日は見てきました。

 2021年にアメリカで起きていた「ゲームストップ株騒動」を描いた作品。ほんの3年前の出来事なのに映画になってんのすげぇ。題材になった出来事は不勉強ながら全然知らなかったのですが、監督のクレイグ・ギレスピーは大好きな『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』の監督。

 あと、株についての映画といえば何と言っても『マネー・ショート 華麗なる大逆転』。こっちも僕はめっちゃくちゃ大好きで。こちらは2008年のリーマン・ショックを描いた作品(本作でも一瞬だけ引用されていました)ですが、テンションの上がり下がりが激しい描写、すさまじい会話のテンポ感が見ていて気持ちよくて、一時期ネトフリで会話劇を流し聞きするためだけにヘビロテしてたくらいです。

 で、今回の『ダム・マネー』もこういう雰囲気の作品に期待してたところがあるんですが、結果としてその需要には120%答えてくれていました。とにかく金を操作する人間たち(特に裕福層)のなんか人としてイっちゃってる感がヤバい。

 そんな奴らが、ゲーム関連の新品・中古品を扱う小売店の企業「ゲームストップ」の株を空売りし、それに個人投資家ローリング・キティ(演じるのはリドラーでお馴染みポール・ダノ)が気づいたことで騒動は始まります。キティはランボーリスペクトなハチマキに猫のTシャツ姿YouTubeやRadditなどのSNSを駆使しながら「愛するゲームショップをマネーゲームの餌にするなんて我慢がならねぇ!」と株を買いまくり、それに共鳴した個人投資家たちもゲームストップ株を買い始めます。やがて個人投資家の動きは大手ヘッジファンドも無視できないものとなり、ここに個人投資家VSクソ裕福層ヘッジファンドの超絶バトルが始まる……というのがおおまかなあらすじ。

 株を題材にしているのでとっつきにくい……と思いきや、要は空売りを通すか通さないかのバトルなので、前述の『マネー・ショート』と比べてもめちゃくちゃ分かりやすいです。最低限空売りの仕組みだけ覚えていれば十分。その用語すらも公式サイトで紹介されてるので、ほとんど事前準備がいらない親切設計。

 それでいて、出演者も豪華。ポール・ダノ以外ではセス・ローゲン、『アベンジャーズ』シリーズのバッキーことセバスチャン・スタン、『バービー』にも出ていたアメリカ・フェレーラ、微笑みデブことヴィンセント・ドノフリオなんでこんな役やってんだとツッコみたくなるデイン・デハーンなどなど。あとポール・ダノの弟役でピート・デビットソンが出てて、登場時は「ホントどうしようもねぇなコイツ……」と思わせてくれますが、後半になるにつれこの兄弟の描写もすごくグッとくるものに変化してます。

 『ザ・バットマン』では怪しさ爆発だったポール・ダノですが、今回もナードみあふれるキャラではあるものの、そこそこ有名な配信者であるという以外は自分らと何も変わらない一市民で好感が持てました。「リーマン・ショック時に大学を卒業して就職が大変だった」って言っててほぼ同世代っていう。あと配信前に赤いハチマキを巻くというランボーしぐさをしますが、『君たちはどう生きるか』の眞人といい『ゴジラ-1.0』の神木くんといい、最近の映画はみんなランボーフォロワーになってて大変喜ばしい。なお、ハチマキを巻くシーンは明らかに『ランボー怒りの脱出』のような撮り方をしてるので、本作がランボーを意識してるのは確実だと思われます。しかもこのハチマキ、終盤の演出で一役買ってるのがまたいいんだ……。

 何より、物語後半はストレートに市民VS金融界を支配する大企業のストレートな階級格差バトルに発展していくのがテンション上がります。ゲームストップ株は大暴騰しますが、それを支えるのは普通の会社員、看護師、学生、ゲームストップの店員など、一人ひとりは金のない個人投資家です。おまけに世間は絶賛コロナ禍。株を買えば買うほど生活は圧迫されるし、株価が上がるにつれ「絶対そのうち暴落するぞ」「売っちゃって一抜けした方がよくない?」という生々しいやり取りが各々で交わされます(いわゆる囚人のジレンマゲーム)。でも彼らは利益を得ることよりもヘッジファンドマネーゲームに我慢がならねぇ!」精神を重視して戦ってるので、「ダイヤモンドの手!」を合言葉にして絶対に株を手放そうとしない。そこにシンプルな高揚感と面白さが漂ってるんですよね。

 果たしてゲームストップ株騒動はどうなるのか? 現実で起きた出来事なので調べれば簡単に分かるのですが、もし知らない方はぜひそのままの知識でご鑑賞ください。株と違ってこれは絶対損しません。

 

 


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クレイグ・ギレスピー監督作、主演は『バービー』のマーゴット・ロビー。超面白い。超オススメ。

 


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↑本作が面白かったのなら、関連作品としてこちらもオススメ。とにかく映画自体のテンションがおかしい。