狂信者こそ心に疑念を宿している。

Ryuto(リュート・スマイリー)のブログです。趣味の話とかしたい。

『最後の決闘裁判』

 公開を待ちに待った映画で、先月15日には公開していたのに、中々タイミングが合わず、気づけば公開最終日。

 ようやく観にいけました。最後の『最後の決闘裁判』(これが言いたかっただけ感)。


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 というわけで、『ブレードランナー』『エイリアン』『オデッセイ』(そして個人的には何より『エイリアン:コヴェナント』)等々、名作を挙げればキリがない巨匠リドリー・スコット御大の最新作です。

 製作が発表された段階では、個人的には「リドスコ監督でマット・デイモンとベンアフ共演!? しかもアダム・ドライバーも出るの!? 最高じゃん!」と思ってたのですが、情報が出てくるにつれどうもそういう楽しみ方をする空気ではない気がしてきて、実際に見てみたら有害な男性性をド直球に非難する超ヘビー作品でした。

 物語は羅生門形式で、決闘に挑む男二人とレイプ被害を訴える女性をそれぞれの視点で描いていきますが、カルージュ(マット・デイモン)視点とル・グリ(アダム・ドライバー)視点の(主観的)真実を描く第2章までは「語る側によってここまで見え方が違うのかー」という感じだったのが、第3章のマルグリット(ジョディ・カマー)視点での”真実”に入ると「おい! さっきと違う! どっちも最低やんけ!!」とがっつり変わるのが怖かった(加えて言えば、男性二人から見たマルグリット像自体はそんなに変わらず、程度の差はあれどっちも「男が思う都合の良い女」なのがなんとも……)。

 結婚したその時から、レイプシーン、裁判という名のセカンドレイプ、そして決闘に至るまで、マルグリットが単なるトロフィーとしてしか扱われてないのが酷い。この映画に出てくる登場人物はマルグリット以外ほぼ全員敵(カルージュの母の「私も経験したけど、女は黙っているのが正しいのよ」という説教とかもう最悪)で胸糞なんですが、なんせ僕も男に生まれているわけで、現実社会においては無意識にせよ、この加害者側に与する可能性の方が高いわけですよ。「大丈夫? 今の自分カルージュになってない?」と心配になりました。妻をモノ扱いし、命よりも名誉なんてものを重んじる男社会、本当にサイテー。

 見れば見るほどマルグリット以外の登場人物には全員ムカついてきますが、この映画を作った人たちも出演した人たちも全員えらい。ジョディ・カマーが素晴らしい演技だったのはもちろんのこと、マット・デイモンアダム・ドライバーベン・アフレックもえらい。アダム・ドライバーよくこんな役引き受けたな、と思うし、ベン・アフレックは自身のイメージを逆手に取って演じたのだろうけど、それにしたってよく自ら進んでこんな役やる気になったなと思う(ベンアフはマット・デイモンとともに脚本にも関わってるので、自分のイメージ投影はかなり意識的だったはず)。

 あと、他の役で言うとシャルル6世を演じたアレックス・ロウザー、どっかで見たと思ったら『イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密』で少年時代のアラン・チューリングを演じてた子でした。あの映画内ではいじめを受けていた彼が、本作ではクソ中世封建社会の中心に座っているというのも意地悪だな……。

 そしてリドスコ御大、既に次回作『ハウス・オブ・グッチ』が控えております。マジでどんだけ仕事してるんだよこのお爺ちゃん……。引き続き御大によるアダム・ドライバーが見られるのが楽しみです。


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↑決闘シーンが始まるまでの冒頭5分。この辺の構成含め「シグルイ」っぽい。


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↑御大仕事しすぎなんよ。